「後継者が見つからない…」「事業の成長のためにM&Aを考えたいが、費用が心配…」

事業承継やM&Aは、会社の未来を左右する重要な経営判断です。しかし、その過程ではファイナンシャルアドバイザー(FA)やM&A仲介業者、弁護士、会計士といった専門家のサポートが不可欠であり、相応の費用がかかります。

そんな悩みを抱える中小企業の経営者の皆様に朗報です! 「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」は、事業承継やM&Aを進める際に必要となる専門家への依頼費用の一部を国が補助してくれる制度です。

今回は、この「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」の11次公募(暫定版)について、その目的から対象者、補助内容、申請の流れまで、詳しく解説していきます。

【!】はじめに:重要な注意点

  • 本記事で解説する内容は、2025年3月時点の公募要領に基づいています。申請にあたっては必ず確定版の公募要領をご確認ください。
  • 本補助金の電子申請には「gBizIDプライム」アカウントが必須です。アカウント取得には時間がかかる場合があるため(通常1~2週間、混雑時3週間程度)、早めに取得手続きを進めることを強く推奨します。

1. 「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」とは?

この補助金は、中小企業や個人事業主(以下、中小企業者等)が事業承継、事業再編、事業統合(これらを総称してM&A)を行う際に、経営資源の引継ぎに要する専門家への委託費用等の一部を補助することを目的としています。

これにより、M&Aを円滑に進め、地域経済の活性化や雇用の維持・創出を図ることを目指しています。

補助金には、M&Aの当事者の立場に応じて、以下の2つの支援類型があります。

  • (1) 買い手支援類型(I型): 事業再編・事業統合に伴い、株式や経営資源を譲り受ける予定の中小企業者等を支援します。
  • (2) 売り手支援類型(II型): 事業再編・事業統合に伴い、株式や経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等を支援します。

2. 誰が対象になるの?(補助対象者)

補助対象となるのは、以下の要件をすべて満たす中小企業者等です。

基本的な要件:

  • 日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営んでいること。
  • 中小企業基本法に準じた「中小企業者等」であること(下表参照)。
  • 補助対象となるM&A(後述)の最終契約書の契約当事者(またはその予定)であること。
  • 【法人】 申請時点で設立登記後、3期分の決算・申告が完了していること。
  • 【個人事業主】 税務署へ「個人事業の開業届出書」および「所得税の青色申告承認申請書」を提出してから5年が経過しており、確定申告書B等の写しを提出できること。

【対象となる中小企業者等の定義】

業種分類資本金の額又は出資の総額常時使用する従業員の数
製造業その他*13億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下
サービス業*25千万円以下100人以下

*1 ゴム製品製造業(一部除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下
*2 ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下、旅館業は資本金5千万円以下又は従業員200人以下

【対象外となる中小企業者等】

  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されている法人。
  • 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等。
  • 社会福祉法人、医療法人、学校法人、組合等。

売り手支援類型(株式譲渡)の場合の特例:

  • 株式を譲渡する対象となる中小企業(対象会社)に加えて、その会社の議決権の過半数を持つ支配株主(1者)または株主代表(1者)も、対象会社と共同申請することで補助対象者となることができます。(支配株主等が費用を負担する場合)

3. どんなM&Aが対象?(補助対象事業)

補助の対象となるのは、単なる資産の売買ではなく、実質的な事業の引継ぎ(事業再編・事業統合)を伴うM&Aです。

補助対象となるM&Aの主な要件:

  • 補助事業期間内(交付決定日から約12ヶ月間を想定)に、M&Aに関する基本合意契約または最終契約が締結される予定であること。(または廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であること)
  • 経営資源を譲り渡す者(被承継者)と譲り受ける者(承継者)の間で、実質的な事業再編・事業統合が行われること。
  • 【買い手支援類型】
    • M&A後にシナジー効果を発揮し、生産性向上等が見込まれること。
    • M&A後に地域経済を牽引する事業(雇用の維持等)を行うことが見込まれること。
    • デュー・ディリジェンス(DD)を実施すること(補助対象経費にDD費用を計上するか否かに関わらず必須)。DDとは、相手企業の財務状況や法務リスクなどを精査する調査のことです。
  • 【売り手支援類型】
    • 地域の雇用維持など、地域経済を牽引する事業を行っており、M&Aによってそれが第三者に継続されることが見込まれること。
  • 公序良俗に反する事業や、風俗営業等ではないこと。
  • 国や地方自治体の他の補助金・助成金と重複しないこと。(同一事業・同一経費での重複は不可)

対象となるM&Aの形態:

株式譲渡、事業譲渡、第三者割当増資、株式交換、合併、会社分割などが対象となります。詳細は公募要領でご確認ください。

【!】補助対象外となるM&Aの例:

以下のようなケースは、原則として補助対象外となりますのでご注意ください。

  • グループ会社間の再編
  • 親族間の事業承継
  • 土地・建物などの不動産や物品の売買のみで、事業の実態(従業員、顧客、ノウハウ等)の引継ぎがない場合
  • M&Aの取引価格が専門家費用に比べて著しく低いなど、取引価格の合理性が確認できない場合(例:無償譲渡や1円譲渡で合理的な理由がない)
  • 事業譲渡において、設備、従業員、顧客といった有機的一体な経営資源の引継ぎがない場合
  • 株式譲渡後に、買い手が過半数の議決権を保有しない場合
  • 休眠会社や事業実態のない会社のM&A
  • 従業員の引継ぎがない場合(特に不動産業では原則必須、他業種でも対象外となる可能性あり)

4. 何が補助されるの?(補助対象経費)

補助対象となるのは、補助事業期間内(交付決定日~期間終了日)に契約・発注し、支払いまで完了した経費で、事務局が必要かつ適切と認めたものです。

主な補助対象経費:

  • 委託費:
    • FA(ファイナンシャルアドバイザー)・M&A仲介費用: M&Aの相手探し、交渉、手続き支援などを依頼する費用。【最重要】必ず「M&A支援機関登録制度」に登録されたFA・仲介業者への費用のみが対象です。
    • デュー・ディリジェンス(DD)費用: 相手企業の財務・法務・税務・事業内容等を調査する費用。
    • 企業価値評価費用: M&Aにおける企業価値を算定する費用。
    • PMI(Post Merger Integration)費用(買い手支援のみ): M&A後の経営統合プロセス(組織、業務、意識の統合など)にかかるコンサルティング費用等。
    • その他、契約書案作成など、M&Aプロセスに必要な専門家(弁護士、会計士、税理士等)への委託費用。
  • (売り手支援のみ)廃業費: 事業再編・事業統合に伴う廃業に必要な費用(廃業登記費用、在庫処分費、解体費、原状回復費など)。

補助対象外となる経費の例:

  • M&Aの成約を条件とする成功報酬部分(※別途、成功報酬に対応する補助金類型があります)
  • 株式の取得費用、事業用資産(不動産、設備等)の購入費用
  • M&Aの取引価格そのもの
  • 公租公課(消費税など)、振込手数料
  • 補助事業期間に契約・発注・支払いが行われた経費
  • 汎用性が高く、他の目的にも使用できるものの費用(パソコン、事務用品など)

※補助対象経費の詳細は、公募要領の別紙等で必ずご確認ください。

5. 補助率は?上限額は?

  • 補助率: 原則として、補助対象経費の 2/3以内 です。

6. 申請から補助金交付までの流れ

補助金の申請から交付までは、概ね以下の流れで進みます。

  1. 公募期間の確認: 事務局ウェブサイト等で確定版公募要領と公募期間を確認。
  2. gBizIDプライムアカウント取得: 未取得の場合は速やかに取得。
  3. 電子申請: 申請システム「jGrants」から必要情報を入力し、必要書類を添付して申請。
  4. 審査・選考: 事務局による要件審査、書面審査。(加点事由あり。過去の補助金での賃上げ未達成等は減点対象。)
  5. 採択・交付決定: 審査結果が通知され、採択されると交付決定。
  6. 補助事業実施: 交付決定日以降に、M&Aに係る専門家との契約、業務の実施、経費の支払いを行う。 【重要】交付決定前の契約・支払いは対象外です!
  7. 実績報告: 補助事業期間終了後、所定の期間内にjGrantsを通じて実績報告書と証憑書類(契約書、請求書、領収書等)を提出。
  8. 確定検査: 事務局が実績報告の内容を審査し、補助金額を確定。
  9. 補助金交付: 確定した補助金額が交付(精算払い)。
  10. 事業化状況報告: 補助事業完了後、一定期間、事業の状況等を報告する必要あり。

7. 申請のポイント・注意点 まとめ

  • 【FA・仲介費用を計上する場合】相手が「M&A支援機関登録制度」に登録されているか必ず確認する!
  • 【買い手】デュー・ディリジェンス(DD)は必須!
  • 補助対象外となるM&A(不動産売買のみ、親族間承継等)でないか確認する!
  • 経費の契約・発注・支払いは必ず「交付決定日」以降に行う!
  • 売り手支援(株式譲渡)で支配株主等が費用負担する場合は「共同申請」を検討する。

8. まとめ

「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」は、M&Aを検討する中小企業にとって、専門家活用の費用負担を軽減し、円滑な事業承継・再編を後押しする非常に有効な制度です。

この補助金を活用し、専門家の力を借りて、会社の未来に向けた大きな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


【免責事項】 本記事は、2025年3月時点の「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)公募要領(暫定版)」等の提供資料に基づき作成されています。補助金の内容、要件、スケジュール等は変更される可能性があります。申請にあたっては、必ず最新の確定版公募要領をご確認いただくか、お問い合わせフォームから弊社までご相談ください。

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